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     【裏】ロシア政治経済ジャーナル No.217


                       2024/5/12


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★ロシアの実態を知るために~マリーナ・オフシャンニコワさんの証言



全世界の裏RPE読者の皆様、こんにちは!

北野です。



(@本のPRがありますが、依頼されたわけではありません。)



皆さん、こういう話を聞いたことがあるでしょう。



「プーチンは、悪のグローバリズムと戦う、
善なるナショナリストの英雄だ!」



これは、クレムリンが世界に拡散しているプロパガンダですが、
日本でもネットを中心に驚くべき数の人が信じているようです。

私の立場は、どうなのでしょうか?

私は、プーチンがグローバリストと戦ってきた事実を否定しません。

私の本、たとえば


◆『プーチンはすでに、戦略的には負けている 
~  戦術的勝利が戦略的敗北に変わるとき 』

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を読めば、


・プーチンは、90年代ロシアを牛耳っていたユダヤ系新興財閥
ベレゾフスキー、グシンスキーを追放した。

・プーチンは、ジェイコブ・ロスチャイルドの支持を
とりつけていた石油最大手ユコスのCEOホドルコフスキーを
逮捕させた。

・グローバリスト・国際金融資本のジョージ・ソロスは、
プーチンが「ロシアの勢力圏」と考える旧ソ連圏での革命を
支援していた。


などなど、「陰謀論のようなホントの話」が、
証拠つきで語られています。

だから、「プーチンがグローバリストと戦ってきた」
というのは、事実です。


私が同意できないのは、【 善の 】という部分です。


私は、1990年から2018年までモスクワに住んでいました。


ゴルバチョフ、エリツィン、プーチン、メドベージェフ、
プーチンの時代を過ごし、その変化を見てきました。


それで、「善のプーチン」と主張する人たちを見ると、
「ロシアのことを知らないのだな」と思ってしまいます。


今のロシアでは、「戦争反対!」というプラカードを持って
歩いたり、Tシャツを着て歩いたり、SNSに投稿すれば
逮捕されます。

何度も書いていますが、たとえば女の子が学校で
反戦の絵を描いたら、彼女のお父さんが逮捕された。

娘が作った花飾りをバッグにつけて歩いていたら、
逮捕された。

その理由は、「花飾りが黄色と青色で、
ウクライナ国旗を思い出させるから」。


ロシアで今起こっていることは、
まさに「ディストピア映画」のようです。


「反戦」と言えば、もっとも過激な形で
「反戦」を表現した女性がいました。


マリーナ・オフシャンニコワさんは、
国営テレビのニュース中に、


「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」


というプラカードを持って登場し、逮捕されました。

@映像で確認してみましょう。↓
https://www.youtube.com/watch?v=zToju2KJLdc


彼女は幸い、欧州に亡命することができました。

そんなマリーナ・オフシャンニコワさんの
証言が載っていました。(出所は後ほど)

彼女自身の証言からいくつか引用してみましょう。

彼女は、取り調べの様子を語っています。

捜査官は、彼女の単独行動とは考えておらず、
「黒幕がいる」という証言を引き出そうとしていました。

(@ロシアでは、すべての悪事の背後にアメリカ、
イギリス、あるいはCIA、MI6などがいることになっています。
そういえば日本にも、誰かが殺されると、検証もせずに
「あれはCIAが殺した!」と即決する人たちが
少なからずいます。たとえば「プリゴジンを殺したのは
CIAだ!」「ナワリヌイを殺したのはCIAだ!」など。)



〈「あなたは誰のためにやってるんです?」

捜査官がまたきいた。

「隠れた動機を探そうとしても無駄です。

これは犯罪的な戦争に対するノーマルな人間の
ノーマルな反応だと思います。

2月24日という日に、わたしたち一人一人の
テーブルの上に、いつのまにか『悪魔との契約書』が
置かれたのです。

この犯罪的な体制のために働き続けるつもりなら、
それは、この契約書にサインしたということです」〉



〈「それで、誰がこれをやれって命令したんですか?

あなたにカネを払ったのは誰なんです?」


相手はまたきいた。


「カネを払ったですって?

わたしは何も不自由していません。

モスクワの中流階層の普通の生活を送っています。

幸せに暮らすためのものは全部あります。

素晴らしい子供たち、家、犬、クルマ、友達……」


「でも、ブレスレットは何ですか……金ですか?」


「よくあるイミテーションです。何が言いたいんですか。

この世のすべてはカネだと思ってるの?

それは間違ってます!」〉
ーー


どうやら捜査官は、「アメリカかイギリスが、
彼女に金を払って、あの行動をさせた」という、
いつものストーリーを構築したかったようです。


マリーナさんは、ゼレンスキーとプーチンの比較もしています。



〈「そうだ、ゼレンスキーがあなたに感謝の意を
表していましたよ」

携帯から目を離して男が突然言った。

それから気まずそうにすぐ口をつぐんだ。

いらぬことを言ったと思ったのだ。


「それは素晴らしい。ゼレンスキーに感謝しなくちゃ」


わたしは元気を出した。


「ゼレンスキーは英雄ね。

包囲されたキエフから逃げ出さなかったし、
リヴォフ(ウクライナ語ではリヴィウ)に避難しろと
言われても国民と共に残ったし。

ヨーロッパで犯罪的な戦争を始めておいて
地下壕に隠れるプーチンとは大違い」〉
ーー


率直です。

そして彼女は、「行動した動機」を語ります。

非常に重要な部分なので、ゆっくり熟読していただきたいです。



〈「マリーナ・ウラジーミロヴナ。
なぜそんなに自分の祖国が嫌いなんです?」

2人になると、捜査官は厳しい口調できいた。


「わたしは祖国を愛しています。

でも、祖国といま権力にいる人たちとは全く別々のものです。

あの人たちがしたことを考えてみてください。

ポーランドとモルドヴァの国境には数百万人もの
ウクライナ難民がいます。

寄る辺のない女性と子供たちです。

プーチンは一日でこの人たちから何もかも奪ったんです。

家も仕事も……。

それがどんなことかわたしは知っています。

子供の時、チェチェンで同じことを経験しましたから。

わたしの家族は第一次チェチェン戦争が始まった時、
グローズヌイから避難を余儀なくされました。

住宅も家財道具も本当にすべてを失いました。

母は40歳を超えて人生をゼロから始めざるをえなかったのです。

母はいまでもそのトラウマから立ち直っていません。

1990年代は、苦しみと貧困と屈辱の長い日々でした。

だから難民の将来がどんなものか、よくわかるのです。

途方もなく大きな悲劇です。

オフィスにいるあなたたちにはわかるわけがありません」〉
ーー



結局マリーナさんは、フランスのマクロン大統領が
「外交的保護」を申し出たことで救われることになりました。

なぜロシアは、マリーナさんの亡命を許したのでしょうか?

彼女が「世界的有名人」になっていたからでしょう。

彼女に厳しい処分を下せば、ただでさえ悪い
プーチン政権の評判がさらに悪化します。


そして、もう一つ重要な事実があります。

「ロシア国内でどんなに影響がある人物でも、
外国に追い出してしまえば、ロシア国内における影響力は
ほとんどなくなる」ということ。

たとえば、石油大手ユコスのCEOだったホドルコフスキーは、
2013年以降イギリスに住んでいます。

彼は、イギリスで反プーチン活動を続けていますが、
ほとんど影響力はありません。

ドイツにいたナワリヌイが、リスクを犯して
ロシアに戻ったのも、「ドイツにいたら影響力が
なくなる」と思ったからでしょう。

戻った結果、逮捕され、殺されることになったのですが・・・。


マクロンさんの提案に乗って、マリーナさんを欧州に追い出す。

これは、ロシアにとっても、「悪くない解決策」だったのです。



皆さんは、マリーナさんの言葉を聞いて、何を感じましたか?

今回の出所1は、
https://gendai.media/articles/-/129169?imp=0

出所2は、
https://gendai.media/articles/-/129176?imp=0


マリーナ・オフシャンニコワさんのことを
もっと詳しく知りたい方は、彼女自身の著書


◆『2022年のモスクワで、反戦を訴える 』

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をご一読ください。

アマゾンの解説文は、


〈彼女を大胆な行動に駆り立てた理由とは?

周囲の沈黙と冷笑の中、すべてを失いながら自らの
良心に従いながら一人で行動し、自由を勝ち取った女性の手記。

ロシアのウクライナ侵攻後まもない2022年3月14日。

モスクワの政府系テレビ局・チャンネル1のニュース番組中に
スタジオに乱入し、反戦ポスターを掲げた女性。

この映像は瞬く間に全世界に配信され、
一躍時の人となったマリーナ・オフシャンニコワ。

しかし彼女の行動は、欧米での賞賛の一方、母親はじめ
国内の多数派からは「裏切者」のレッテルを張られ、
激しいバッシングの対象に。

同局のニュース編集者として何不自由ない暮らしをしていた
彼女をこの行動に駆り立てた理由とは?

そして、彼女の周辺のメディア関係者は、ごく少数の支援者の
強まる言論統制のなかでどのような行動をとっていたのか?

反戦行動後、逮捕・失職・親権制限・自宅軟禁など、
次々とやってくる逆境。

最終的には娘を連れて決死の国外脱出に成功するまでの
激動の7ヵ月間を描く。〉
ーー

そして。

今の日本の言論空間が
「米英情報ピラミッドの支配下にあること」は間違いありません。

そのウソに気がついて、真実を求めて探求を始めた人たちがいました。

しかし、彼らがたどりついた場所は、
「クレムリン情報ピラミッド教」だったのです。

そこは、米英情報ピラミッドとは100%
正反対な価値観の世界が広がっていました。


戦争を始めたのは、ロシアではなくウクライナとアメリカ。

ロシアは、悪ではなく善。

プーチンは、侵略者ではなく英雄。


問題は、「正反対の価値観」を信じている人のおそらく99%は、
「これらの情報の出所はクレムリンだ」ということに
気がついていないということです。


私は、「米英情報ピラミッドとクレムリン情報ピラミッド、
【 両方見ましょう 】」と提案したいです。


「両方見ている」私が書いた、「第3の見方」を知りたい方は、



◆『プーチンはすでに、戦略的には負けている 
~  戦術的勝利が戦略的敗北に変わるとき 』

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@既に読まれた方は、アマゾンにレビューを
書いたいただけると、とてもうれしいです。



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