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【裏】ロシア政治経済ジャーナル No.87
2021/4/30
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★ナワリヌイの「ＦＢＫ」解散へ
全世界の裏RPE読者の皆さま、こんにちは！
北野です。
ロシアで唯一まともな野党勢力ナワリヌイの団体が、
解散するそうです。
TBS NEWS 4月30日。
＜ロシアの野党勢力指導者、ナワリヌイ氏の陣営幹部は、
ナワリヌイ氏が率いてきた組織を解散すると発表しました。
２９日に行われた裁判にオンラインで出廷したナワリヌイ氏。
弁護団によると、３週間あまりのハンガーストライキで、
２０キロ以上体重が落ちたということです。
こうした中、ナワリヌイ氏の陣営幹部、ボルコフ氏は２９日、
ナワリヌイ氏が率いてきた組織について、「過激派」と
認定される可能性が高まり、これ以上の活動は難しいとして
組織を解散すると発表しました。
ナワリヌイ氏が率いる「反汚職基金」などの組織をめぐっては、
検察当局が「過激派」と認定するよう求めて提訴。
現在、裁判が行われています。
過激派と認定されれば、組織の活動は違法となり、
関係者は刑事罰に問われることになります。＞
ナワリヌイの「反汚職基金」については、検察が
「過激派認定するよう求めている」そうです。
そして、ロシアの司法は、「法」ではなく、
「政治的」な判決がでるので、
ほぼ確実に「過激派認定」されます。
それを見込んで、「反汚職基金」は解散を決めたのでしょう。
と、ここまで読んで、「ばっちりわかった！」
という人はあまりいないでしょう。
今回は、ロシアの政治状況について、
わかりやすく解説します。
▼ロシア議会には野党が存在しない
ロシアにも、「形式的な」民主主義はあります。
定期的に大統領選挙と議会選挙が行われる。
しかし、ロシア議会に、真の野党は存在しません。
なぜ？
ロシアの下院には、
・統一ロシア（与党）
・ロシア共産党
・ロシア自由民主党
・公正ロシア
4党の議員がいる。
位置づけは、統一ロシアが与党で、残り3党は野党です。
ところが、野党３党も、「決してプーチン批判はしない」
ことで徹底しています。
ロシアには、プーチン大統領の下に、ミシュスチン首相
がいる。
その下に、閣僚がいます。
野党は、首相や閣僚の批判を時々する。
しかし、プーチン批判は、決して決して決してしないのです。
だから、ロシア議会に「本当の野党」は存在しません。
▼ナワリヌイは、実際「唯一の野党」
ナワリヌイは、「反汚職基金」（FBK)の創設者です。
かつては「カリスマ政治ブロガー」でしたが、今は、
「カリスマ政治ユ—チューバ—」になりました。
チャンネル登録者数は651万人です。
彼は、どんな内容を投稿していたかというと、
ロシア政府高官の汚職に関する動画。
4年前まで、ロシアでもそれほどメジャーな存在では
ありませんでした。
ですが2017年3月、一本の動画でブレイクします。
それは、「オン・ヴァム・ニ・ディモン」という動画で、
メドベージェフ首相（当時）が、複数の超巨大別荘を
所有しているという内容でした。
この動画がきっかけで、ロシア全土で大規模デモが
起こりました。
＠これ、ロシア語がわからなくても、是非ごらんになって
みてください。
メド別荘群の規模を知るだけで、理解が深まります。
https://www.youtube.com/watch?v=qrwlk7_GF9g
プーチンとメドは、大規模デモを徹底的に無視しつづける
ことで、この危機を乗り切りました。
そして、彼らはこの時「インターネットの影響力は
侮れない」と確信したのです。
クレムリンはその時まで、テレビを完璧に支配していた。
ですが、ネットは事実上放置されていました。
しかし、この動画以降、ネット規制がどんどん
強まっていったのです。
2018年、私は28年住んだモスクワから日本に
完全帰国しました。
その最大の理由が、「ネット規制」だった。
だから、ナワリヌイは、私の人生にも影響を与えたのです。
▼毒殺未遂から、ＦＢＫ解散まで
プーチン政権にとって、もっともうざったい存在である
ナワリヌイ。
昨年8月に、「毒殺未遂」がありました。
彼は、飛行機の中で意識を失った。
その後、ドイツに移送され、なんとか死なずにすみました。
ドイツ、フランス、スウェーデンの検査で、
彼の毒殺未遂には、化学兵器、軍用神経剤「ノビチョク」が
使われたことが明らかになった。
「ノビチョク」は、2018年の「スクリパリ暗殺未遂事件」
に使われたものと同じです。
生き残ったナワリヌイは、昨年末から次々とプーチン
政権の「神話」を崩壊させる動画を投稿していきました。
まず、2020年12月14日、
「事件は解決された。私は、私を殺そうとしたすべての人
を知っている」
という動画を公開。↓
https://www.youtube.com/watch?v=smhi6jts97I&t=1s
この動画の中で、ナワリヌイは、彼を殺そうとした実行犯
8人の名前と写真を公開しました。
（実行犯を見つけたのは、ナワリヌイではなく、イギリス
の「ベリング・キャット」という団体です。）
2020年12月21日、ナワリヌイは、まだ衝撃的な動画を公開
しました。↓
https://www.youtube.com/watch?v=ibqiet6Bg38&t=109s
「私は、殺人者に電話した。彼は（暗殺未遂を）認めた。」
この動画の中で、ナワリヌイは、ＦＳＢの上司のフリをし
て、実行犯の一人と45分間話すことに成功しています。
実行犯の一人とされるコンスタンティン・クドゥリャフツ
ェフは、飛行機が緊急着陸したオムスクで、ナワリヌイの
服を回収し、毒が発見されないように洗ったことを認めま
した。
さらに、クドゥリャフツェフは電話で、「なぜナワリヌイ
はまだ生きているのか？」という質問に回答。
彼は、ナワリヌイの乗っていた飛行機が緊急着陸せず、
「もう少し長く飛んでいれば」、ナワリヌイは死んだだろ
うと語りました。
1月18日、ナワリヌイは、ロシアに帰国し、
空港で逮捕されました。
1月19日、ナワリヌイの同志たちは、準備していた爆弾動
画を公開。
「プーチンのための宮殿。最大の賄賂の歴史」↓
https://www.youtube.com/watch?v=ipAnwilMncI&t=346s
簡単にいうと、黒海沿岸（クラスノダール地方ゲレンジー
ク）にある「プーチンの巨大別荘」に関する動画。
ロシア語がわからなくても、30分ぐらいから見てください。
その規模に卒倒することでしょう。
建設費用は、推定1400億円。
建物以外も入れた総敷地面積は７８００ヘクタールで、
モナコの39倍だそうです。
この動画はものすごいスピードで拡散され、
現在までに1億1600万人の人が見た。
ロシア人の、「1.3人に1人」が見たことになります。
これで、ロシア人の「プーチン神話」は崩壊しました。
「プーチン神話」とは？
「プーチンは、愛国者で、物欲があまりない、
【クリーンな政治家】だ」
という神話です。
ロシア人の心から、プーチンに対する
尊敬や信頼が失われました。
しかし、プーチン時代は、今もつづいています。
ただ、その統治は、「質的」に変わりました。
「神話(尊敬と信頼）による統治」
ではなく、今は、
「恐怖による統治」
です。
そして、4月29日、「反汚職基金」の解散が発表されました。
理由は、検察が、「反汚職基金は過激派組織」と
認定しようと動いていること。
（そして、活動をつづければ、ほぼ100％「過激派組織」
に認定されるでしょう。）
というわけで、ロシアから、最大の野党勢力がなくなります。
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